交差点中心近くを「くるり」 まつもと道路交通考・第2部⑤正しい右折を定着させよう
車の強引な右折に代表される危険な「松本走り」の解消には、ドライバーの意識向上に加えて、道路環境の整備が欠かせない。正しい右折方法を地域全体に浸透させていくと同時に、右折車をサポートする誘導線の表示など交差点の改良も進めていく必要がある。
市民タイムスが松本市内の交差点2カ所(村井交差点と筑摩西交差点)で行った「松本走り」の独自調査では、交差点の中心付近に進まないまま右折待ちをする車に違反が多かった。手前から曲がり始めるので直線的な右折となり、スピードが出て、横断歩道上の歩行者を脅かすケースもあった。右折レーンのない場合は、後続の直進車が交差する道路のスペースを抜けられないため、渋滞の原因にもなる。
信州つかま自動車学校(松本市筑摩4)では、右折待ちの位置について「交差点の中心近くで車が小半径でくるりと曲がれて、対向車の右折も妨げない位置」と指導している。松本地域は交差点に歩行者や自転車がいないケースが多く、安全確認がおろそかになりがちだ。ベテラン指導員の川本諭さん(52)は「歩行者や自転車がいる『かもしれない』運転を」と呼び掛ける。
交差点の右折レーンで右折車が進むルートを路面に示す誘導線は、松本市内では国道19号の白板や渚、鎌田、高宮などの交差点に引かれている。誘導線に沿って進めば交差点中心の内側を通る正しい右折ができる仕組みだ。
ドライバーに正しい右折ルートを習慣づける効果も備えているが、松本地域には誘導線のある交差点がまだ少ない。右折レーンのない交差点には誘導線を引けないという課題もあり、一層の道路改良が求められる。
全国的には交差点手前の停止線を前方に移して引き直す「コンパクト化」で、事故を抑止しようとする流れもある。交差点の中心から離れた停止線から車が直線的に右折するのを防ぐ試みだ。国土交通省名古屋国道事務所が平成22(2010)~28年に67カ所の交差点で「コンパクト化」を図り、事故減少の効果が得られたという。
「コンパクト化」に際しては、片側1車線道路では大型車の右左折スペースを確保する配慮も必要になるが、交差点の交通安全対策に詳しい日本大学理工学部の小早川悟教授は「『コンパクト化』でドライバーは周囲の状況判断がしやすくなる」と話し、「松本走り」解消の手だてにもなり得るとの見解を示している。
(第2部終わり)
第3部は3月に掲載します。随時掲載の「まつもと道路交通考」にもご期待ください。