2025.4.24 みすず野
リレーコラムを執筆されている仏文学者の山本省さんは、新著『ジオノに挨拶するために』(彩流社)で、『木を植えた男』などで知られるフランスの作家、ジャン・ジオノの人と作品を紹介している。冒頭「フランスという国は農業国なので、パリ以外はすべてのんびりした田舎なのである」というのが意外だった◆ジオノが生涯を過ごしたマノスクという町の人口は2万人。東筑摩郡5村ほどだ。地元の人の意識だと、相当に大きな町だという。町から外に出ると、そこには「豊かな自然が延々と広がっている」◆「フランスでは古来、タンポポの綿毛を吹いて恋占いをした。そこでタンポポの花言葉を『田舎の神託』という、と荒俣宏が書いている」と詩人の髙橋睦郎さんは『季語百話』(中公新書)でいう。作家で仏文学者だった澁澤龍彦はタンポポが大好きだったが、これにはなぜかふれていないと◆タンポポを好んだ理由は「花鳥風月的な情緒によって汚染されていない」ということだが「和歌時代はともかく俳諧時代にはけっこうとり挙げられている」そうだ。ジオノも一人、タンポポの綿毛をそっと吹いたのかもしれない。