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「松本走り」解消、地域挙げて まつもと道路交通考第2部④啓発や取り締まり鍵に

 車の強引な右折に代表される「松本走り」は、松本地域の貧弱な道路環境が要因になって、一部の地元ドライバーに浸透してきたとの見方が強い。「松本走り」の危険性を地域全体で共有し、啓発や取り締まりを強化していく必要がある。
 県警は「松本地域だけが運転マナーが悪いとは捉えていない」(交通安全対策室)とし、「松本走り」については「警察が認定したものではないのでコメントできない」という立場だ。ただ、交差点での車の強引な右折には厳しく目を光らせており、各地で重点的な取り締まり日を設定している。県警公式ホームページ(HP)にも「無理な右折は危険です」の項目があり、図解入りで危険性を列挙している。
 県の公式HPでも県外ドライバーから「強引な右折」への苦情が多いとしてマナー向上を訴えている。「長野県は右折優先か?」との指摘もあるという。
 こうした取り組みは意義深く便利だが、HPでは検索をしなければ情報に出合えない。各種メディアで残念ながら「有名」になってしまった「松本走り」という言葉に向き合っていく方法もあるのではないか。
 愛媛県には「伊予の早曲がり」と呼ばれる危険運転の"ご当地ルール"がある。右折車が対向の直進車よりも先に曲がることを指す。
 愛媛県警は令和4年に専従チームを発足させ、毎月1回、摘発週間を設けた。「いけんよ!"伊予の早曲がり"は危険な交通違反です」というポスターも作った。愛媛県警交通指導課の山口博丈次長は「肌感覚」と前置きした上で「以前より違反が少なくなった」とみる。
 茨城県の「茨城ダッシュ」は「松本走り」と同様の強引な右折方法だ。茨城県警は令和5年6月20日に「茨城ダッシュ緊急取り締まり出陣式」を県警察学校(茨城町)で大々的に開催してPRした。公式HPでも「茨城ダッシュは違反です!」と呼び掛けを続けている。
 茨城県警交通指導課の方波見景子理事官は「法令用語では伝わりにくいので、思い切って『茨城ダッシュ』を使う方向にかじを切った」と話す。
 日本交通心理学会の元会長(現運営委員)である石田敏郎・早稲田大学名誉教授は「事故防止のためには効果的な取り締まりと、分かりやすい教育が大事」と、地域性を踏まえた対策の必要性を指摘する。