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危険な右折、松本は3割超 まつもと道路交通考・第2部②「松本走り」実態を調査

 道路交通法は、車が右折する際の運転方法として「道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側を徐行しなければならない」と定めている。交差点内は直進車が優先で、横断歩行者の安全を第一にしなければならないという決まりだ。強引で危険な「松本走り」は道交法違反となる。

 松本市によると、交差点での「松本走り」の右折には主に〈1〉直線的にスピードを落とさず通過〈2〉対向の直進車や左折車があるのに割り込む〈3〉右折先の横断歩道を歩いている人を妨害―の3類型=図=がある。実態はどうなのか。市民タイムスは1月下旬、松本市内2カ所と東京23区内2カ所の交差点計4カ所で、〈1〉~〈3〉に該当する車の比率を独自調査した。
 各交差点で午前と午後に1時間ずつ計2回、目視で調べた。
 その結果、松本市の国道19号村井交差点では406台中162台が、同市の筑摩西交差点では394台中136台が、〈1〉~〈3〉のいずれかに該当した。「松本走り」の比率は村井交差点が39・9%、筑摩西交差点でも34・5%に上る。
 一方、東京都中野区の南台交差点では342台中35台が、世田谷区の光明学園前交差点では356台中61台が〈1〉~〈3〉のいずれかだった。「松本走り」率はそれぞれ10・2%と17・1%で、松本市内より大幅に低かった。
 松本市では横断中の歩行者を脅かす危険な運転が複数回、確認できた。村井交差点近くの会社に勤める30代女性は「右折車にぶつかられそうになったことが何度もある」と話していた。
 これに対して南台交差点(全方向に右折レーン・矢印信号・車線誘導線あり)では歩行者や自転車の通行が多く、右折車は基本的に矢印信号に変わるまで待っており、横断歩行者妨害は皆無だった。交差点近くにある交番によると「危険と分かっているから、みんな慎重に運転している」という。
 光明学園前交差点は道幅が狭く、右折レーンも時差式信号もないため、赤信号への変わり際に〈1〉の右折が見られたが、それでも2割未満にとどまった。
 さまざまな条件によって単純比較はできないとはいえ、「松本走り」という呼び名の通り、松本地域では都会に比べて、強引で危険な車の右折が横行していると言えそうだ。松本では歩行者が右折車に遠慮して立ち止まったり、小走りで渡る姿がたびたび見られた。
 松本市の交通安全対策を担当する武居厚志・自転車推進課長は「長年続いた習慣を変えるのはなかなか難しいが、周知を図りたい」と話す。