連載・特集

2025.2.1 みすず野

 球春の到来だ。プロ野球の各球団がきょう、キャンプに入る。ファンなら、ひいき球団の状況におのずと関心が向く。松本ゆかりの牧秀悟選手(横浜DeNAベイスターズ)らの調子も気になるところだ◆2月1日はプロ野球の黎明期に活躍した沢村栄治の誕生日でもある。東京巨人軍の選手時代にノーヒットノーランを3度成し遂げた(『文藝春秋が見た戦争と日本人』)。最優秀の先発完投型投手が受ける賞に名前がつき、偉大さが分かる。惜しまれるのは最期だ。「二度の召集でいずれも中国戦線に出征(中略)一九四四年、三度目の召集で南方に向かう途中、輸送船が撃沈され死亡した」(『同』)◆沢村は野球の本場・米国にも名をとどろかせた。昭和9(1934)年に来日した米国大リーグ選抜チームを相手に、17歳の沢村は本塁打を浴びたものの1点に抑えて完投した。沢村の好投にベーブ・ルースを含む大リーグの強打者たちは舌を巻いた◆時は移り、沢村以外は歯が立たなかった大リーグで日本人選手の活躍が目覚ましい。もし、戦争がなく、沢村が大リーグでプレーしていたら...。戦後80年の節目に平和の尊さを思う。