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安曇野のハナバチを図鑑に 昆虫研究家・腰原正己さんが姿と生態詳細に

「島新田区のハナバチ図鑑」の写真パネルと腰原さん

 安曇野市穂高北穂高のアマチュア昆虫研究家・腰原正己さん(77)は、花粉や花の蜜で幼虫を育てるハナバチ(ミツバチ、クマバチなどの総称)の「図鑑」を作った。自宅の畑などに飛んできた約50種類を捕まえて体の特徴や好む花などをつぶさに観察し、模造紙4枚分の写真パネルにした。安曇野の生物多様性が垣間見える労作だ。

 題名は「島新田区のハナバチ図鑑」。各種類のハチの体をさまざまな角度から撮り、採集した個体ごとに顔を接写、吸密していた花を背景に写真を並べている。西洋ミツバチとの大きさ比較、体の特徴、生存戦略なども分かりやすく紹介する。
 ヒメハナバチ科、ミツバチ科など5科の49種を掲載し、『三郷村誌』や『大町市史』の掲載数より多いという。地元の公民館でこのほど開かれた区の作品展に出品すると「すごいじゃん」「本を出せばいい」と反響を呼んだ。
 腰原さんは生物科の元高校教諭で、県シニア大学講師の経験も持つ。昆虫と植物の関係に興味を抱く中「ハチが自分のためにする行動が植物のためになっていることがおもしろい」とハナバチに注目し、昨春から本格的に研究を始めた。
 採集したハチは冷蔵庫で保冷して動きを止めてから取り出し、やがて動き出す瞬間を狙って撮影する。羽の脈、鼻の位置(頭楯)の形、毛の付き方などで種類を特定するが、見分けが付かず判別に4~5時間かかる場合もある。「(判別の)目が慣れてくるのも楽しい。苦痛だけれど」と笑う。
 腰原さんは畑の雑草を適度に残し、野菜や草花に来るハナバチの研究を今も続ける。写真パネルは、友の会会員となっている大町山岳博物館(大町市)の展示物として活用できないか思案中だ。
 腰原さんは「ススキなどの枯れた茎を巣材にするハチもいる。ハナバチがどう生活し、(人が)どう保護していくか考える段階ではないか」と話している。