連載・特集

2024.10.4 みすず野

 外国映画やテレビドラマで、警察官が容疑者の家に踏み込むシーンでは、体格のいい男がドアに体当たりしたり蹴っ飛ばしたりしてドアを開ける。日本の刑事ドラマではこういうシーンがほとんど出てこない。それは日本のドアは多くが外開きで「外開きのドアを外から蹴ったって開きっこない」と『ドク・ホリディが暗誦するハムレット』(岡崎武志著、春陽堂書店)で知った◆先月86歳で亡くなった建築家・渡辺武信さんの『住まい方の演出』(中公新書)に詳しく載る。欧米でドアは「例外なくと言っていいほど内側に開く」が、和風、洋風を問わず、ドア形式の玄関が増えてきた日本はたいてい外側に開くという◆客を迎えるには内開きのほうがよさそうだが、なぜ日本の玄関のドアが外に開くかというと、玄関で履物を脱ぐからだ。内側に開くと履物に引っかかりやすい。オフィスやホテルで内開きが多いのは、こうした履き替えが行われないからだ◆そういえば近所の家を訪ねる時、何気なくドアが開く距離を保って立っていると気づく。外開きは土間を水洗いしたい、隙間風を嫌うという日本人の生活様式にも適しているそうだ。