地域の話題

松本出身の作家・谷川彰英さん本出版 難病を患う中で生きる喜び

 松本市入山辺出身の作家で筑波大学名誉教授の谷川彰英さん(79)=千葉市=がこのほど、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を宣告されてから9冊目となる著書『ALS 苦しみの壁を超えて―利他の心で生かされ生かす』(明石書店)を出版した。26日には母校の松本深志高校で"声なき講演"を行い、若者たちに生きることで得られる喜びと可能性を命懸けで伝える。

 著書は四六判247ページで、1月に千葉県市原市で開かれた文化人によるオープンカレッジで行った講座の内容をベースに、全8章で構成されている。
 第1章は、令和元年5月にALSと宣告を受け、生死の境をさまよう絶望の淵から行った「生きる!」宣言を、2~6章で直近の2年間に体験したヒューマンドラマを紹介している。生きる選択をしたことで始まった、山梨県の中学校の教諭や生徒との交流や、昨年11月に5年ぶりに帰郷して開かれた山辺中学校の同窓会などで得た感動の数々を、生き生きと描いている。
 7章では、家族や医師、介護スタッフに命を支えられている感謝の心が、「さまざまな苦しむ人々の支えになりたいという『利他の心』に昇華した」とつづる。終章では、難病の膠原病と闘いながら日仏で活動するアーティスト・さかもと未明さんとの対談も収録している。
 人工呼吸器が外れれば死に至る危険と隣り合わせの生活で、障害者用パソコンで文字を打つのは通常の数十倍の手間が掛かる。247ページに及ぶ著書の重さは命そのものだ。谷川さんは「『利他の心で生かされて生かす』の境地を知って、生きることの素晴らしさと豊かさを感じ取りました」とつづり、「どんな困難にもくじけず、生き切りましょう!そう考えている私は幸せです。そんな幸福空間を届けてくれたALSよ、ありがとう!」と締めくくっている。