連載・特集

2024.7.26 みすず野

 猛暑の日々、学校の夏休みが始まった。「な・つ・や・す・み」という音のつながりだけで、楽しいことがぎっしり詰まった時間の中に飛び込んだような思いがよみがえるのは、おそらく今よりは気楽だった大昔の子どもだからだ◆特に7月のうちは、この毎日が永遠に続くような気がしていた。虫捕りは遊びの筆頭で、なかでもトンボ捕りは誰もが夢中になった。オニヤンマやギンヤンマが捕れればいいが、小学生にはなかなか難易度が高かった◆それより小型になると、トンボがとまっている棒を見つけ、そっとトンボを追い払ってから棒を握り、人さし指を立てる。トンボが指にとまるのを待って親指で足を押さえる。毎年、この方法を一度は試してあの頃を思い出している◆茅野市出身の建築家・建築史家の藤森照信さんは『タンポポの綿毛』(朝日新聞社)で、全く同じ方法を紹介して「秋津洲大和国の各地の少年少女が体験していると思う」と。諏訪大社上社本宮と前宮の間の県道沿いに、ちょっと変わった建物がある。高部公民館でこの地出身の藤森さんが設計した。ここを通る度に、藤森少年が顔を出しそうな気がしている。