連載・特集

2024.7.19 みすず野

 夏の訪れを、あ、きょうからだと感じる朝がある。昨日がそうだった。5時過ぎ、空を覆っていた雲が日の光で白く輝き、間にまだ色が薄い、若々しいような青があちこちに広がっていた。昨日までと異なる景色。午前中、梅雨明けが発表された◆日本画家の鏑木清方(1878~1972)は「つゆあけ」と題した短いエッセーで「近年は世界中の調子が不順なせいか、俳諧の季題で味わっていたような季節感が、年ごとに薄れていくのは味気ない」と書き出す(『鏑木清方随筆集』岩波文庫)◆梅雨明けは「明けると一緒にカッと照ってくる梅雨晴の暑さ、それは着ものばかりか身体までかびたような気味わるさを一気に掃う快さ」とともにこの先「暑熱にはいる門出でもある」と記す。昭和27(1952)年7月に書かれた◆当時の暑さとは、その過酷さが違う。夏が特別な季節なのは夏休みがある子どもたちに限らない。それは変わらないが、近年の猛暑には、大げさでなく命の危険が伴う。考えられる対策を万全にして、厳しい暑さを乗り切りたい。もちろん、あれもこれもと、この季節ならではの楽しみがたくさんある。よい夏を。