連載・特集

2024.7.15 みすず野

 作家の開高健さんは、中国・上海で酒屋のショーウインドーに星が五つもついたブランデーを見つけホテルへ買って帰る。のちのノーベル賞作家の大江健三郎さんを呼び「乾杯!」。でも大江さんは黙って洗面台に走って吐く。開高さんは2、3口飲んでからやはり洗面台に走った◆ヘアトニックを何かの花油に溶かしたような味と香り。とてもブランデーとは思えない。二人は誰かのところへ持っていこうと話しやはり作家の野間宏さんの部屋へ。昼寝の最中だった野間さんは巨体を起こすとゆうゆうと飲み干す。うれしそうに笑って「もう一杯おくれ」(『地球はグラスのふちを回る』開高健著、新潮文庫)◆食べ物であたったということはない。イカと山菜でじんましんが出たくらい。一人暮らしのときは、買ってから日数がたって多少怪しいと思う食べ物も臭いで判断したり、箸の先に付けて味を確かめたりして食べた。こんなことは自慢にもならない、運が良かっただけだ◆高温で湿度が高い日が続く。食品の管理には細心の注意が必要だ。冷蔵庫は頼りになるが過信は禁物。判断に迷ったら食べないというのは山菜やキノコと同様だ。