連載・特集

2024.5.3 みすず野

 大型連休後半のスタート。ずっと仕事という人や、休みでも農作業、日頃たまった雑用の片付けに費やすという人もいるだろう。家族で出かける楽しみもある。その中で1日だけ時間を割いて、釣りざおを手に出かけられないか◆という計画を大型連休が来る度に何度も立てた。結果は一度も実現しなかった。その度に、釣り人がどっと渓流に入ってくるような時は避けた方がいい、などと自分を慰めた。出かけられたのは、6月に入ってから、という年が多かった◆喜び勇んで出かけたのに、川の石で滑って尻もちをつき、釣りざおを折ったり、胴長という胸まである長靴が破れたりして、情けない思いで帰った日もあった。渓流釣りから遠ざかって随分たつが、ヤマブキの黄色い花を見ると今年もいよいよ季節だなと思う◆部屋の中にいて戸外のあれこれを夢想する釣り師を「アームチェア・フィッシャーマン」と呼ぶそうだ。釣りという遊びをいかに楽しんでいるかというエッセーを集めた『安楽椅子の釣り師』(湯川豊編、みすず書房)という1冊もある。知っている釣り場を思い描きながら、川の様子や釣り人の姿を想像するとしよう。