連載・特集

2024.1.27 みすず野

 俳人の飯島ユキさんが先日、小紙毎週土曜日掲載の書評欄「ほっと一冊」で鍋物がテーマの書籍を紹介しておられた。内容を「フードライターである著者が訪ね歩いた18人の鍋模様」と述べており、寒い季節におのずと興味がそそられる◆寒空の日に食卓で湯気の立つ鍋をつつく想像をしてみる。スープのベースはしょうゆ味か、みそ味か、ちょっと変化を付けてトマト味か。具材は鶏肉や魚のタラ、白菜、豆腐、シメジ...。想像が勝手にどんどん膨らみ、鍋の日の食卓が待ち遠しくなる◆俳人の飯島さんの紹介だから、鍋にかかわる季語をいくつか。鹿肉の「紅葉鍋」、猪肉の「牡丹鍋」、牛肉の「鋤焼」「牛鍋」、フグの「河豚鍋」「てっちり」、アンコウの「鮟鱇鍋」。いつ食べてもいいが、やはりいずれも冬の季語だ。日頃自分が食べることがかなわない物を並べ書いてみた◆筆者の子どもや学生時代は、鍋といえばわいわい、がやがやと大勢でつつくイメージが強かった気がする。いつ頃からだろう。1人用の鍋スープのもとなどがテレビコマーシャルで放送されるようになったのは。時代のありようとともに食卓の風景も変わる。