地域の話題

加助騒動と少女の物語―「おしゅん朗読会」10年の歴史に幕

最終公演に向けて練習に励む森のおうちお話の会

 江戸時代の農民一揆で処刑された少女「おしゅん」の物語を題材にした朗読会が今年の公演で幕を閉じる。安曇野市三郷明盛の貞享義民記念館が主催、穂高有明の絵本美術館森のおうちの協力で10年続いたが、出演する森のおうちお話の会の会員の高齢化で継続が難しくなった。集大成とも言える23日の最終公演に向けて出演者の稽古に熱がこもる。

 物語は、松本藩で貞享3(1686)年に発生した貞享騒動が舞台。おしゅんは、過酷な年貢に苦しむ農民を救おうと立ち上がった多田加助ら一揆主導者の一人である小穴善兵衛の娘で、加助ら27人とともに捕らわれて16歳で処刑された。
 児童文学者・大坪かず子さんの作品『おしゅん~加助騒動と少女~』を原作に、森のおうちお話の会が朗読劇に仕上げた。重税に苦しむ農民の気持ちや憤り、処刑前の恐怖、誰もが幸せに生きたいという願いが表現されている。朗読会は、11月22日の加助らの命日に合わせて平成26(2014)年に同記念館で始まり、重要な恒例行事となっている。
 朗読の演出とマリンバ演奏を担当している酒井倫子・森のおうち名誉館長は「これからもやりたいという気持ちはあるが、会員の高齢化で公演に責任を持てない年齢になってきた」と説明する。今後については「おしゅんの話は安曇野の誇れる史実。これからも皆さんの心の中で生きていてほしい、というのが長年演じてきた私たちの願い」と語る。
 朗読会の台本は継承を願って同記念館に譲る。同記念館は公演後に興味ある演劇団体などに印刷代程度で複写を提供する。寺島俊郎館長は「別の団体が引き継いで公演してくれるようになればうれしい」と期待する。
 最終公演は23日午前11時からと午後2時からの計2回で、定員は先着順に各回30人。入場料が310円(中学生以下無料)。申し込み・問い合わせは同記念館(電話0263・77・7550)へ。