米作り守りたいけれど... 価格高騰、農家苦悩の田植えシーズン

政府が備蓄米を放出しても価格高騰と品薄が続くなど、米を取り巻く環境が消費者にとって厳しい中、松本地域では田植えシーズンを迎えている。10日は昔ながらの家族総出の作業が行われている一方、集約化した水田では、効率化を図るために自動ロボットによる田植えも見られた。農家はそれぞれの思いを抱えながら、今年の米作りを始めている。
松本市神田の森崎幸司さん(55)は神田地区を中心に高齢化などで耕作できなくなった水田を受託し、約20ヘクタールで米作りをする。今シーズンから、人が操縦しなくても作業ができる田植えロボットを導入し、8日に使用を始めた。田んぼの形を記憶させると、稲を植える順路を考え、作業を進め、同時に肥料や農薬の散布も行える。
松本平の農家の担い手でつくる「水稲後継者ネットワーク」の代表を務める森崎さんは「仲間とどう効率化していくかを考えている」と話す。米の高騰に関し「消費者が購入する価格が倍になってもその分、農家に還元されるわけではない」と嘆く。JAの米の買い取り値が本年度は3割増しになったが、肥料代も3割増しになり、利益には簡単に直結しない。「消費者は今の値段を高いと思うかもしれないが、この値段でようやく他産業並みに経営として成り立つ。農業用アプリやロボットを駆使し、効率的に生産したい」と意気込む。
塩尻市広丘郷原の髙橋武夫さん(66)は親戚5人で約80アールの田植えをした。米不足に関して「だからといって急に作れるわけではない」と話す。昨年中に減反政策として、加工米1トンを作る申し込みをしており、そのままの計画で進めるしかないという。「田んぼを守っていくためにも、米の買い取り価格がもう少し上がってほしい」と願っている。