松本の本文化を担い75年 アガタ書房が5月で閉店

貸本屋として知られ、25年ほど前からは古書や中古レコードを販売してきたアガタ書房(松本市中央2)が今月、閉店する。店主の小林隆志さん(69)がジャズ好きだったことから、ジャズのレコード、音楽関連の本を多く扱い親しまれてきた。2~11日は古書、23~25日はレコードの閉店セールを行い、創業75年の歴史に幕を閉じる。
隆志さんと妻の泉さん(64)が営んできた。後継者がいないため「元気なうちに本の整理をしたい」と閉店を決めた。古書1万冊、ジャズ中心のレコード約2000枚の在庫を半額で提供する。
昭和25(1950)年、隆志さんの両親が女鳥羽川沿いにあった松本県ケ丘高校同窓会館1階(中央2)で回覧の雑誌業を開業。月刊誌を配達、回収する制度で1000人を超える会員を集めた。昭和43年、現在地の高砂通りへ移転したころから、漫画や一般書を扱う貸本屋に変わり、平成10(1998)年ごろ古書店となった。
隆志さんは「本の裏街道を扱ってきた」と謙遜するが、貸本屋時代には「漫画を安く読める」と人気となった。また、古書店でも音楽関連の充実の品ぞろえで、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーが訪れたり、松本平の音楽好きが常連となったりと、松本の本の文化向上の一翼を担ってきた。
隆志さんは「古本や中古レコードとの出合いは一期一会。二度と手に入らない物も扱うから」と魅力を語る。「廃刊したジャズ雑誌全巻を売ってしまい後悔したこともある」と話す。泉さんは「夢中でやってきた。常連の方と話が弾めばうれしかった」と笑顔を見せる。隆志さんは「オーディオとレコードを使って音楽がゆったり楽しめる店ができたら」と夢も抱いている。
午前10時~午後6時。11日まで無休で営業し、いったん閉店。23日から3日間、レコードだけのセールを行う。