犠牲者悼み千体観音 御嶽噴火災害 埼玉の仏師・岩松拾文さん 門下生300人と共に彫る 木曽町福島の興禅寺観音堂に安置

死者・行方不明者63人を出した平成26(2014)年の御嶽山噴火災害の犠牲者の冥福を祈る千体観音の開眼法要が1日、木曽町福島の興禅寺で営まれた。埼玉県春日部市の仏師で、全国で仏像彫刻の教室「小仏彫刻の会」を主宰する岩松拾文さん(81)が門下生約300人と共に6年半かけて彫り続けてきた観音像を奉納した。
観音像は高さ18㌢の木曽ヒノキ製。優しいほほ笑みをたたえながら、それぞれ表情が異なる。背面に「御嶽山大噴火犠牲者供養」「安らかにお眠り下さい」といった祈願文と制作者名が書かれ、犠牲者の名前を記した像も。令和2年に改装された興禅寺観音堂に安置されている。
木曽ヒノキを使って全国の寺院に仏像を奉納してきた岩松さんは、いずれ木曽地域に感謝を伝えたいと思っていた折、噴火災害が発生したことから犠牲者の供養を兼ねて発願した。奉納に当たり興禅寺で彫刻教室を開き、木曽地域の住民も制作に関わった。
開眼法要には岩松さんの門下生と檀家ら約90人が集まり、噴火災害犠牲者を慰霊した。116体を彫った上松町栄町の野村武敏さん(87)は「自分の作った観音像が仲間のものと一緒に奉納され、犠牲者へ心からご冥福を祈る気持ちになった」と話す。上松町出身の石﨑邦彦さん(81)=横浜市=は、噴火災害が起きた故郷に心を寄せ「木曽のために少しでも役に立ちたいと取り組んだ。災害を忘れないためにも、ここへお参りに来てもらえたら」と願った。
岩松さんは、新型コロナウイルス禍で供養が延期を重ねたことにも触れ「法要ができるか不安だったが、噴火から10年を前にようやく営めた」とほっとしていた。