地域の話題

朝日村の土で造形 あすから美術館で濱田卓二さん個展

朝日村の土で制作した作品と作者の濱田さん

 土で創作を続ける安曇野市穂高有明の彫刻家・濱田卓二さん(39)が朝日村の土で造形した作品を紹介する個展「土たちの詩話」が7日、朝日美術館で始まる。縄文遺跡が多くある村での個展開催にあたり「縄文人と同じ土で制作したい」との思いを抱き、村教育委員会や専門家の協力で村出土縄文土器の土の種類の研究も実施。村内3カ所で採取した土と比較分析した結果、縄文土器に使われた土は約2~5万年前の波田ローム層に非常に近いことが分かってきたという。

 濱田さんは学生時代から土を焼き上げて作品を制作。「○△□」をテーマに創作を続け、今回は村内で採った土から大小12点を制作した。採取した土は普段使っている市販の土に比べ扱いにくく、割れたりヒビが入ったりしたものの、土の個性を感じ「ものづくりの価値観も変化した」という。土を扱いやすくするため天日干しするなどして手をかけ、焼きの温度も試行錯誤しながら進めた。濱田さんは「縄文土器にはものづくりの原点を感じる。現代と縄文の価値観の違いを深く考える機会にもなった」と話す。過去3年間で制作した16点、ドローイング作品8点も展示する。
 土器の胎土(土の種類)研究は昨秋に研究グループを立ち上げて開始。胎土の候補は、古見の畑で採取した波田ローム、鎖川左岸の河床で採った5~10万年前の小坂田ローム、鎖川右岸段丘の崖で採った58~69万年前の梨の木ロームの3種。名古屋工業大学でエックス線解析を行い、実際の土器と比較分析した。村教委の担当者は「はっきり分かっていなかった胎土を解き明かす契機になった」とし、地質コンサルタントの下田力さん(65)は「胎土が分かってきたことで縄文の暮らしぶりもよく見えてくる」と話している。