地域の話題

熊の目撃 例年より多く 木曽郡内 90件超 県、町村 注意呼び掛け

目撃情報を受け6月に設置された熊の出没に注意を促す看板(大桑村)

 木曽郡内で熊の目撃が相次いでいる。6月に郡内6町村へ寄せられた目撃情報は6月28日現在、集落近くを含めて計91件(暫定値)に上り、50~60件台の例年に比べてかなり多い。山に餌が少なくなるこれからの夏本番の時季は特に人里へ近づきやすく、8月ころにかけて目撃数はピークになるとみられ、県や各町村は住民らに注意を促している。

 各町村に寄せられた目撃情報は▽上松町25件▽大桑村23件▽木曽町19件▽南木曽町9件▽木祖村8件▽王滝村7件―となっている。理由はよく分かっていないが、郡内全域で目撃が多い傾向だ。人への被害は確認されていないが、中学校付近に現れたり、工場への通勤ルート道脇の木に登っていたりと遭遇事故が起きかねない状況だ。
 県木曽地域振興局林務課の鳥獣対策専門員・下澤幸典さん(49)によると、春先に山の餌が少ないと早くから熊が人里に近づくことがある。親と別れたばかりの若い熊が、新しいすみかを探して歩き回る時季でもある。
 令和2年6月には、南木曽町田立で朝にジョギングをしていた地元の男性が熊とみられる動物に襲われ、亡くなる事故があった。下澤さんは、早朝や夕暮れは熊が活発に動く時間帯と重なるとし、警戒を促す。遊休地を隠れ家にしていることもあり注意が必要という。
 対策として▽生ごみや野菜など餌になるものを屋外に置かない▽山に近づく・入る際は鈴などで音を鳴らし人の存在を知らせる―ことを挙げる。各町村では防災無線で注意喚起し、木祖村、木曽町、大桑村はLINE(無料通信アプリ)で情報発信も行う。下澤さんは「木曽は熊の生息地と人の暮らす地の距離が近い。熊に遭わないよう地域の状況の確認など注意をお願いしたい」と呼び掛けている。