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惨事の記憶 語り継ぐ 大桑の大水害から100年 村歴史民俗資料館 来月企画展 教訓生かす機会に

脱線した機関車の写真など災害の恐ろしさを伝える資料が並ぶ会場

 大桑村で死者・行方不明者計78人を出すなど大きな被害をもたらした大正12(1923)年7月の大雨災害から、間もなく100年を迎える。村歴史民俗資料館は節目に合わせ、当時を語る資料を並べる記録展を7月1~23日に開く。記憶を語り継ぎ、安全な地域づくりを考えるきっかけにする目的だ。

 大雨災害は17日夜から18日未明にかけて起こり、村内では須原や長野地区を中心にほぼ全域で土砂や洪水の被害に見舞われた。特に被害があったのは木曽川支流の伊奈川の氾濫で、川沿いにあった発電所建設作業員の宿舎が流され、関係者41人が犠牲になった。村内には今も記念碑や供養塔が残る。
 展示には当時の新聞記事や土砂に襲われた民家、脱線した機関車を写した写真などが並ぶ。郷土史に詳しい故・神村透さん=木曽町日義=が寄贈した、上松町と南木曽町の一部を含む被害箇所を示した図もある。村を襲った他の年の水害も含め、写真24点、文書などの資料36点で災害の恐ろしさを伝える。
 村によると、大正12年以降、犠牲者が出た水害は村内で起きていない。ただ、近年でも大雨により、平成30(2018)年に木曽川に架かる旧大桑橋が落橋するなどの被害があった。資料館の展示担当者は、災害の記憶が風化していくことを懸念し「過去を教訓に、これから自分たちがどう安全をつくっていくか考える機会になれば」と願う。
 開館は午前9時~午後4時半で、観覧無料。期間中の3、10、18日は休館。7月8日午後1時半~3時には、県立歴史館の笹本正治特別館長を講師に記念講演会を村役場で開く。申し込みや問い合わせは資料館(電話0264・55・3550)へ。