連載・特集

2023.5.14みすず野

 タケノコがおいしい季節。木の芽あえはいかが。木の芽みそはいささか値が張るが、市販されている。木の芽はサンショウの若葉、里山を歩けばあちこちに自生している。容易に手に入るから、あとは"ずく"のあるなしだ◆今は聞かないが「たけのこ医者」という言葉がある。治療の下手な医者をいう。やぶにもなっていないので、やぶ医者より未熟な医者を指す。落語では、医術より吉原方面が得意な藪井竹庵がおなじみの登場人物だ。さまざまな古典落語に顔を出す◆「大根役者」は、芸のまずい役者を指す。大根の色が白いことから素人にかけたという説や、どんなに食べても食あたりしないことから、芝居が下手で当たらないという説などがある。これは今でも聞く◆駆け出しの記者は「トロッコ」というと聞かされた。汽車にもなっていないという意味だが、これは実際に使われているのを聞いたことがない。幸い面と向かって言われたこともなかった。こうした言葉は知恵の産物だが、一つ間違えると人を傷つける。使い方が肝心だ。タケノコは4月ころから出回るが夏の季語。「竹の子の道に這ひ出る月夜かな」(中川宋淵)

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