師弟こつこつ剥製作り 烏川渓谷緑地の展示を15年かけ拡充

安曇野市の県営烏川渓谷緑地スタッフ・小椋緑さん(63)=同市穂高牧=は毎年冬、「師匠」の篠原重道さん(75)=同市穂高柏原=と剥製作りに打ち込んでいる。事故などで命を落とした野鳥や野生動物を展示用に再生し、来場者の学習に役立てるためだ。剥製職人は男性ばかりで、技術を他人に教える人は少ない。小椋さんの情熱に打たれた篠原さんが指導を引き受け、15年前から2人でこつこつ展示品を充実させてきた。
持ち込まれたり園内で見つかったりした野鳥や野生動物は冷凍保存しているが、室温との温度差が大きい夏場は公開できなかった。「子供たちに見せたい。何とか剥製にしたい」と思い悩んでいた小椋さんが、たまたま渓谷緑地で工事をしていた造園業者に篠原さんの存在を教わり、指導を頼んだ。
篠原さんは全国コンクール3位の熟練者だが「ウイスキー1本」で引き受けた。「情熱に負けた」と笑う。平成19(2007)年から毎年厳寒期の1カ月半ほど作業を進め、2人で5~6体の剥製を仕上げる。
小椋さんは神奈川県出身で、男の子3人を育てる専業主婦だった。30年ほど前、安曇野市に転居して以来、多くの人と出会い指導を受けたことが今につながったといい「剥製も一人ではできなかった。鳥や動物を持ち込んでくださる方がいて、そして師匠がいるからこそできた」と感謝する。篠原さんは「本当に熱心。生きているうちは手伝っていきたい」と話す。