ツキノワグマとの共存の道探る 研究会発足30年で公開シンポ

NPO法人信州ツキノワグマ研究会(松本市開智2)が発足30年を迎え、節目をうたった公開シンポジウムが19日、同市中央4の市勤労者福祉センターで開かれた。近年ツキノワグマの生息域が拡大し、人の生活圏への出没が全国で相次ぐ中、大量出没に直面する秋田県の事例などを学びながら共存の道を考えた。約30人が訪れた。
秋田県自然保護課の近藤麻実さんが登壇し、集落近くまで森ややぶが広がることで、山林よりも人の生活圏でクマの人身事故が増えていると報告。対策の専門職員を置き、関係機関とも連携しながら緩衝帯の整備や集落点検、市町村職員の研修や出没想定訓練などに取り組む県の動向を紹介した。共生への理解の広がりにも言及し「うまく付き合う道を模索し続けたい」と話した。
研究会の岸元良輔代表は、約30年で5倍に増えた長野県内のツキノワグマの推定個体数や生息地別のクマの死亡率のデータを示した。「人為的に死亡率を上げれば自然の死亡率が下がる。捕獲ではなく、クマが山から里に出てこない対策を優先する方が有効な対策になる」と話した。
研究会は平成7(1995)年に発足。当初よりクマと人との共存を模索し、クマの生態調査や研究、出没現場の点検や普及啓発講座の開催、野生鳥獣保護管理への提言など幅広く活動している。会員は昨年度118人。