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コンビニワープ「厚顔無恥」 まつもと道路交通考・第4部② 駐車場を突っ切る危険運転

 信号待ちや渋滞を避けるため、交差点の角に面している店舗の駐車場を通り抜けて先を急ぐ車が、残念ながら松本地域でも見られる。コンビニエンスストアの駐車場で多発しており、「コンビニワープ」とも呼ばれる危険な運転だ。

 松本市征矢野1の信号機のない市道交差点の角にあるコンビニでは、平日の朝、渋滞に業を煮やして駐車場を通り抜けて行く車が少なくない。コンビニ前の道は通学路になっているが、「ワープ」する車のドライバーは気がせいているためか、駐車場に出入りする際の安全確認が不十分で、男性店主(55)は事故が起きないか気が気でない。
 同市南部のコンビニでも、駐車場が渋滞を回避する裏道扱いをされている。中にはスピードを出して通り過ぎる車もあり、買い物客から「危ない」「ひかれそうになった」という苦情もあるという。店長は「対策のしようがない」と頭を抱える。
 コンビニに限らず、店舗の駐車場は原則として買い物客だけが立ち入りを許される私有地だ。買い物もしないのに自分の都合で無断で通り抜けることは危険なうえに厚顔無恥な行為だ。松本市の太田康朗弁護士は「場合によっては民法上の不法行為に当たる可能性もある」と指摘する。
 県警によると、車で駐車場を出入りする際に歩道を横切る場合は一時停止を行い、歩行者の通行を妨げてはいけないことが道路交通法で定められており、違反すると処罰の対象になる。駐車場を通り抜ける際に人をはねる事故を起こせば、自動車運転処罰法の過失運転致傷罪に問われる可能性もある。
 交通事故トラブルに詳しい弁護士法人・響(東京都)の古藤由佳弁護士によると、コンビニワープは通常想定されている運転ではないため、事故が起きた場合、被害者側の過失が認定されづらく、加害者側に重大な過失があると判断される可能性が高いという。令和2年3月には大分県宇佐市の飲食店の駐車場を通り抜けようとした軽トラックに3歳の女の子がはねられ、死亡する痛ましい事故が起きている。古藤弁護士は「コンビニワープは重大事故につながるルール違反であることをしっかり認識してほしい」と訴えている。