不安を和らげるニット小物「認知症マフ」 安曇野市内の病院で活用

認知症を患う人の治療、療養場面に伴う不安を和らげる手芸小物「認知症マフ」を、病院に取り入れる動きが安曇野市内で広がり始めた。認知症のお年寄りと支え手のコミュニケーションを助ける道具でもあり、関係者たちが、在宅現場や高齢者施設での活用にも期待している。
認知症マフは筒状の表面に花や人形などさまざまな装飾をあしらい、内側にはドーナツ型の毛糸玉を取り付けた編み物。筒に両側から手を入れて毛糸玉を握ったり、カラフルなマフを抱き寄せたりすることで、心身の緊張を解きほぐす作用があるという。英国が発祥で、国内では朝日新聞厚生文化事業団が近年、普及に取り組み、認知が進む。
安曇野赤十字病院(豊科)は一昨年、市内では先進的に導入した。点滴のチューブを嫌がって抜いてしまうなどし、手指の動きを抑えるミトン型の拘束帯を使っている患者や、看護師らの説明に合わせた動作や言葉のやりとりに困難があり、落ち着かない行動を見せる患者などに有効という。誤飲といった事故につながる可能性もあるため、看護師たちが一人一人の症状や反応を見ながら勧める。
同病院が医療・介護・福祉従事者を対象とした6年度の「地域オープン研修会」で、認知症マフを紹介したところ、穂高病院も関心を示した。同じく研修会に参加していた市北部地域包括支援センターを介し、同センターを受託運営する市社会福祉協議会が協力を引き受けた。同社協穂高支所を拠点とするボランティアグループ「クラフトの会」の会員約10人が製作を担い、20個余りのマフが完成した。会を代表し、小澤千恵子さん(80)と丸山たみ子さん(75)が先月下旬、穂高病院を訪ね、古川厚理事長に「楽しく作ったものが役に立てばうれしい」と手渡した。
安曇野赤十字病院の取り組みを主導する認知症看護認定看護師の飯島久仁絵さんは「認知症の方々が安心して暮らすための材料になる。地域の支え合いと理解がマフとともに広がっていけば」と話す。