2025.4.8 みすず野
桜があちこちで開花したと話題になる。毎朝聞いているラジオ番組には、ウグイスの鳴き声を今春初めて耳にしたという便りがあちこちから寄せられている。休日に里山を歩いたが、残念なことにどこからも聞こえてこなかった◆家と道路を隔ててある畑に、毎年この時期に雄のキジが姿を見せた。数年前に住宅が建ち、もう来ないだろうと思っていたが、昨日の朝、懐かしい鳴き声を聞いた。姿は確認できなかったが、どうやら元気でいるらしい◆幸田露伴が「雉酒」を好きだったと、作家、エッセイストの東理夫さんが『酒から教わった大切なこと』(山と渓谷社)で紹介している。初めて聞く酒の名前。作り方はキジのささ身を薄く切り、少量の塩をつけて炭火で焼き、45度くらいのかん酒の中に漬けて4、5分置くという◆「これが実にうまい。ひれ酒や骨酒、あるいは山女魚酒や鮎酒なんていうのもあるけれど、どれも魚類で、鳥類というのはめずらしい」と。アミノ酸が19種類も含まれ、宮中では正月にいただくそうだ。キジなどという食材はそうは手に入らない。今度あの鳴き声を聞けば、未知の味を想像することになりそうだ。