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井上本店が閉店 商都・松本の老舗 アイシティに統合

45年の歴史に幕を下ろした井上本店。閉店セレモニーには多くの人が駆けつけ、温かい拍手と「ありがとう!」の言葉を贈った(31日午後6時59分、松本市深志2)

 商都・松本の老舗百貨店として、市民に長年親しまれてきた井上本店(松本市深志2)が31日、閉店した。平日にもかかわらず朝から大勢のお客が詰め掛け、最後の買い物を楽しんだ。大切な人と大事な買い物をするなど、市民にとって特別な場所だったデパートが松本の街から姿を消した。

 午前10時の開店時には約400人の行列ができ、先着500人に紅白まんじゅうが配られた。正面入り口には中信華道会が30日夜に制作した生け花作品が飾られ、お客を出迎えた。なじみの店員に声を掛け、感謝の言葉を伝える人の姿もあった。
 午後6時半に閉店した後、正面の入り口に社員20人が並び、閉店セレモニーが始まった。井上裕社長が涙で目を潤ませながら「長い間、井上百貨店、松本駅前本店を応援していただきありがとうございます。明日からアイシティでお会いしましょう」と語り深く頭を下げると、歩行者天国となった市道を埋めた人から拍手が沸き起こった。その後、シャッターが閉まっていくと「ありがとう」の声が何度も掛けられた。
 松本市中条の会社員・中村明子さん(40)は「思い出の場所がなくなってしまうのは残念だけれど、アイシティで新たな思い出をつくりたい」と話していた。
 本店の土地と建物は井上が所有している。今後の利活用は決まっていない。