「あおり左折」危険・迷惑 まつもと道路交通考・第4部① 事故を招く横着運転

松本地域では車の強引で危険な右折方法「松本走り」だけでなく、左折しようとする車が進路を右に膨らませる「あおり左折」などの迷惑で誤った運転方法も目立つ。悲惨な交通事故を1件でも減らし、当事者にならないため、日頃から法令を順守した正しい運転を習慣化したい。
松本地域でよく指摘されるのが、交差点で車が左折する際、ハンドルをいったん右に切ってから左に切り返して左折する「あおり左折(あおりハンドル)」という運転だ。中にはセンターラインを越えて対向車を驚かせたり、片側2車線道路で右側の車線にはみ出して隣の車と接触しそうになったりする車もあり、「危険で迷惑」との声が多く聞かれる。
道路交通法は車の左折方法について、あらかじめできる限り道路の左側に寄り、交差点の角に沿って徐行しなければならないと定めている。実態はどうなのか。
市民タイムスが3月30日、安曇野市豊科の国道147号拾ケ堰橋北交差点(丁字路)で左折車を目視で調べたところ、100台中45台の車がルールに反して、いったん進路を右側に膨らませてから左折していた。このうち11台はセンターラインを越えるほど車体を右側に振っていた。
「あおり左折」をする車は、交差点手前での減速が不十分でハンドルを切るタイミングが遅れ、大きく膨らんで曲がる傾向が顕著だった。さらに、信州松本つかま自動車学校(松本市筑摩4)のベテラン指導員は、ドライバーが車幅感覚をつかんでおらず車を縁石などにこするのが不安だったり、車体を右に振ってから左折することが「格好いい」と思い込んだりしていることが「あおり左折」の背景にあると推測している。
オートバイなどの二輪車が多い都会では、左折時の巻き込み事故(車が左後方から来る二輪車などを巻き込む事故)を防ぐため、左折前に車の左側に二輪車が抜けられる空間をつくらない運転が求められる。一方、松本地域は寒冷地でオートバイが少なく、こうした運転習慣が定着していない可能性がある。
県警によると、県内では令和6年中に、左折車による人身事故が301件(負傷者323人、死者2人)あった。道交法のルール通りに左折をしていれば、こうした事故は減らせる可能性が高い。
左折時にはミラーや目視で左の側方や後方を確認してから、十分に減速し、慎重に大きく左にハンドルを回すことが肝心だ。日本自動車ジャーナリスト協会の菰田潔会長は「ルールを守らず、自分のやりやすいように運転する"横着運転"が事故を招く」と指摘している。