2025.4.4 みすず野
「父の転勤にともなって住んだ長野県東筑摩郡本郷村(当時)を訪ねるのは七十年ぶりだ。松本市内のホテルからタクシーに乗り行く先を告げた。『女鳥羽川、スポーツ橋たもと』」◆デザイナー、作家の太田和彦さんは近著『80歳、不良老人です。』(亜紀書房)に収めた「子供時代を訪ねて」をこう書き出す。思い出が詰まったあちこちを歩き共同湯の「仙気の湯」に入る。「ふう...。なんと気持ちがよいのだろう。七十年の疲れがとれてゆくようだった」◆昨年の松本市長選などに触れながら、故郷・松本のあちこちへ足を向ける。麻績村で開かれた筑北中学校昭和36(1961)年卒業生同級会に参加。実に63年ぶりの再会だ。校歌に続いて歌った「故郷」は涙で歌えなくなる。「志を果たしたかわからないが、こうして帰ってきたのだ」◆間もなく80歳を迎える。「まわりに迷惑をかけずオサラバしたい」といい、それには「健康を自己管理する、思い上がらず謙虚でいる、一人で過ごせる」を挙げる。もちろん松本の飲み歩きの話もある。ホテルの喫茶室では「市民タイムスなどを丁寧に読む」との一文があり、思わず背筋が伸びた。