2025.4.18 みすず野
論文や感想文が上手に書けずそのために何度も試験に落ちた。文章上達の方法はないか。この問いに作家の丸谷才一さんは「上手な論文や感想文をたくさん読めばいいのです。あるいは、それしか方法がない」と答える(『丸谷才一の日本語相談』朝日文芸文庫)◆文章は読むだけで上達する。名人の踊りを見ても、きれいに踊れるようにはならない。歌もそう。ところが文章は、読んでいるうちに自然とこつがわかると◆ただ「おもしろいなと思ったり、すごいすごいと感じ入ったりするのでなければ、作文の秘術は学び取れない」という。そして小説家の随筆を読んだらどうかと提案する。目の付け所が個性的で話の進め方が奔放。冗談も言う。それでも理屈が進行する。「ただし試験に合格するかどうかは、保證の限りにあらず」◆文章上達法はたくさん読むことだと多くの人が指摘する。哲学者の鶴見俊輔さんは、うまいと思う文章を子どものときからノートに書き写した。それが100冊以上になったと57歳の時に書いた(『文章心得帖』ちくま学芸文庫)。たくさん読みはしたが物事には例外があるとうつむいて言わざるを得ない。