2025.4.15 みすず野
切れない刃物は役に立たないが何よりもそれ自体が危ない。無理に力を入れたり刃物を動かす方向を変えたりすると、それがけがの元になる。鎌やなた、もっと小さな文具のナイフでもそうだ。何年も新聞のスクラップをしているとよくわかる◆届いた郵便物を開封するのに、レターオープナー(ペーパーナイフ)を使うようになって長い。一日何通も届く封筒を処理しなければいけなくなり手に入れた。握る柄と刃の比率が絶妙。刃物の刃のようには切れない◆のりをべったり付けて封をしてあるとはさみで切る。中身を切断しないように気を使いながらの作業。最近は封筒に接着剤が付いていて、テープをはがして封ができるタイプが多い。レターオープナーが使いやすい◆銀色のインドネシア製もある。持ち手に絵柄が彫られているが、その部分が小さく刃も薄いので実用には向かない。日本文学者の板坂元さんは「日本の骨董屋さんで昔のレター・オープナーを見つけることは難しい」といい「日本の生活には定着していなかった」(『紳士の文房具』小学館)と分析する。これで開封した胸ときめく手紙が1通もないのが実に残念だ。