連載・特集

2025.4.10 みすず野

 大酒飲みではないし、毎日飲まなければいられないというほどでもないが、長い間酒に親しむと、いつの間にか酒器がたまる。もちろん高価なものはひとつもない。気に入ったもので味わいたいというだけだ◆中信地域の古い焼き物を集めた展示会が開かれているというので、池田町の北アルプス展望美術館を訪ねた。7カ所の窯で焼かれた77点を展示する。とっくりが何点か見られた。つぼやかめ、とっくりの類いは頻繁に動かす必要がなかったので飯わんや皿、湯飲みなどに比べて壊れにくく後世に残ったという◆大塩焼(大町市)相道寺焼(池田町)風也焼(松本市)浅間焼(同)入道焼、洗馬焼、信齋焼(以上、塩尻市)のどの窯をとっても「決して画一的ではない、いろいろな製品が産出されたに違いありません」(同展図録)と説明している◆江戸時代中期から明治初頭まで続いた相道寺焼(池田町)のとっくりに引かれた。高さ17・5センチから22センチまでの3本は細長く、茶、黒などの色で、横にしま模様が入っている。手に取れないのが残念だが生活雑器を作った窯だというから、きっと手になじむ重さなのだろう。5月11日まで。