黒川堰追平隧道の絵を山形村に寄贈 百瀬邦孝さん、黒川堰土地改良区

明治から昭和40年代にかけて山形村や松本市波田地区の農地に水を運ぶ農業用水路だった国登録有形文化財・黒川堰追平隧道(松本市波田)を描いた日本画が12日、村に寄贈された。村在住の画家・百瀬邦孝さん(77)=下竹田=が描いた。水が乏しい地域を潤したいと先人が苦労して堰を整備した歴史や、石積みで造られた隧道の文化的価値を後世につなごうと、百瀬さんと東筑摩郡黒川堰土地改良区が連名で寄付を申し出た。村役場会計室の前に展示される。
「追平隧道遺構」と題し、暗いトンネルの隧道内から明るい外を見た光景が描かれている。闇と光のコントラストが印象的な作品だ。一昨年、改良区が行っている堰の清掃活動に百瀬さんが同行し、隧道の中に入って目にした景色を表現した。隧道内には先人が手で掘った荒々しいのみ跡が残り、百瀬さんは「苦労を重ね、私財を投じて堰を造った人たちの魂の叫びが聞こえてくるようだった。いつか作品にしたいと思っていた」と制作の動機を話す。松本市の梓川アカデミア館で行われた公募展・第24回信州梓川賞展(2月1日~3月2日)への参加にあたって作品化し、同展一般の部で銀賞を受賞した。
12日に村役場で寄贈式が行われた。百瀬さん、改良区理事長の上條重幸さん(77)=上竹田、会計理事の百瀬文栄さん(69)=下竹田=が、本庄利昭村長に寄贈の趣旨を紹介し、本庄村長は「貴重な歴史遺産を後世に伝える絵」と感謝した。
隧道は近年、石積みに隙間やせり出しが確認されたため、保全に向けて本年度に修復工事が行われた。