連載・特集

2025.3.25 みすず野

 熊本と高知で桜が開花したと報じられた。これから桜前線が北上して行く。東京が最初に咲いた年もあったが、今年は九州、四国だった。学んだ大学は東京の郊外にあった。新学期は4月中旬に始まり、上京すると校内に植えられたたくさんの桜が満開だった。当時は開花時期がいまより遅かったようだ◆『花のことば辞典』(倉嶋厚監修、宇田川眞人編著、講談社学術文庫)には、桜に関する言葉や慣用句、ことわざがいくつも載る。桜が身近にあり人々のくらしに彩りを添え、関心を集めてきた現れだろう◆あまり耳にしないが「桜は花に顕わる」もそのひとつ。「同じ冬枯れの雑木に見えていたのが、春になって花が咲けば即座に桜だとわかるように、凡庸に見えた人が秘めた才能を開花させて注目を集めること」とある。「酒なくて何の己が桜かな」は「花見の風流も、うまい酒と肴がなければ完全ではない。酒を飲みながら楽しむのでなければ、花見もつまらない」と。これはよく分かる◆桜開花は各地の様子が伝えられ、小紙は「松本城で開花」を報じる。戦後80年。これからも変わることなく、桜の花が彩る紙面を作り続けたい。