2025.3.19 みすず野
「外で昼メシをというとき、ぼくはいつも決まりきったように、そば屋に座っている。誰かに誘われて他の種類の店に行くことはあるが、自分で決めるときは、もう無意識といっていいほどにそば屋なのだ。そして恥ずかしいほど毎度同じものをとるのである」と、指揮者の岩城宏之さんは「天ぷらそば」というエッセーで書いている(『回転扉のむこう側』集英社文庫)◆この「そば」を「ラーメン」に換えるとおおむね毎日の昼食の様子になる。ほとんど同じ店で「恥ずかしいほど毎度同じもの」を頼む。それがおいしいというのが何より第一の理由だが、別の品を選んで期待外れだと切ない◆家の近くに半年ほど前に開店したラーメン店は、客の入りが芳しくないようで、駐車場はいつ見てもすいている。てこ入れのためか、郵便受けにチラシが入っていた。2、3回食べたがなかなかおいしい。ただ調理に時間がかかる◆伊丹十三監督の映画「タンポポ」は、客の入らないラーメン店を立て直す話。短時間で作り、なおかつ客がすぐ食べられるようではだめ。熱々でふうふうするようでないとと指導する。チラシの効果があればいい。