連載・特集

2025.3.18 みすず野

 目の前に広がる雪景色に驚きながら、サッカーの信州ダービーが中止になったことを思い出して、この雪なら仕方ないとあらためてうなずいた。三寒四温とはいうもののまとまった雪になった◆昨日彼岸の入り。「毎年よ彼岸の入に寒いのは」は、正岡子規明治26(1893)年の作。「母の詞自ら句になりて」と前書きがある。夏井いつきさんは「母・八重の言葉がそのまま俳句になっていることに気づき、ほのぼのと一句したためた子規さんである」と解説する(『子規365日』朝日文庫)◆「墓掴み洗ひ了りぬ山椒喰」は俳人・石田波郷の妻の石田あき子の句。小澤實さんは「ようやく墓をつかんで洗い終わった。いい声で山椒喰が鳴いている。墓参の際の墓掃除の動作をていねいに描いている」という(『名句の所以』毎日新聞出版)。山椒喰はスズメくらいの大きさの鳥。墓参りで雪にわずらわされた人も多いだろう◆今春はスタッドレスタイヤの履き替えを、いつもより早めにやろうかと思っていたが、雪景色を見せられて、しばらく待った方がよさそうと判断した。軒下に顔を出したチューリップの芽は、雪をかぶらずにすんだ。