連載・特集

2025.3.17 みすず野

 漢代の歌謡「君子行」の第4句の冒頭に「君子は未然に防ぎ、嫌疑の間に処らず、瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」とある。『中国名言集一日一言』(井波律子著、岩波書店)は「君子は事前に予防し、疑われやすい場所に身を置かない。瓜畑では履に手をふれず、李の下では冠を直さない」の意という◆瓜畑でしゃがむと瓜を取るように見え、李の木の下で手を上げると李を取るように見えるというわけだ。人に疑われるようなことはするなという教えであり「過剰防衛の感もあるが、示唆に富む警句として今もよく使われる」と説く◆高校生の時、運動部員が果樹園のリンゴを失敬して見つかり、学校に連絡されて部員が大目玉を食った。学校中の話題になっていて、授業で「李下」の話をした先生が「連中は本当に食べたけれど」というと教室中が大笑いになった◆石破茂首相が自民党の衆院1期生に、一人10万円の商品券を配っていたことが明らかになった。首相は法的に問題ないとの認識を示したが批判の声が渦巻く。政治とカネに対する国民の疑念が大きいのに、疑われるようなことをする。政治センスの悪さにあきれる。