連載・特集

2025.03.03みすず野

 記者になって最初に支給されたのは、一眼レフカメラと35㍉、50㍉のレンズ。モータードライブが出始めた頃だった。2年目に自前のカメラになった。レンズやストロボなどを含めると、当時の給料では随分高価な買い物だった◆デジタルカメラに切り替わって25年ほど。撮った写真がその場で見られ、フィルムを入れ忘れたり、巻き上がっていなかったりという失敗もしなくてすむようになった。紙面に掲載した写真は1枚ずつ焼き付けていたから、その手間もかからない◆フィルムカメラがある家庭はどのくらいの割合だろう。デジカメを経て、ほとんどの写真はスマホで撮るという人が大半か。もちろんいつでも見られるが、それはスマホの中のこと。写真を手にしてはいない◆近ごろ紙の写真が、若い人たちを中心に人気を盛り返しているという話をあちこちで見聞きした。新型のフィルムカメラを久しぶりに発売したメーカーもある。画像だけでなく、手に取って見られる写真の「存在感」に引き付けられるのかもしれない。それはレコードがまた多くの人を引き付けているのと同じ理由のようでもある。モノと人のつながりとして。