生涯学習集団「風土舎」再開へ 白戸洋さんが師の故・玉井袈裟男さんの活動受け継ぐ

信州大学名誉教授の故・玉井袈裟男さん(1925~2009)が主宰し、県内外に広がった生涯学習集団「風土舎」が来月、弟子で松本大学教授の白戸洋さん(65)によって松本市で再開する。本年度で定年を迎える白戸さんが節目を機に「玉井さんの遺志を継ぎたい」と一念発起した。来る者を拒まず去る者を追わず、出会った人々のネットワークと相互支援や学び合いの中で、主体性のある人づくりや地域づくり、産業の活性化を目指す。
風土舎の誕生は平成2(1990)年3月。自分たちで地域の課題を明確にし、仲間と共に解決を図る「農村青年学習運動」を戦後間もないころから展開した玉井さんが信大退職を機に、学習と実践を通じて主体的な地域づくりを目指す手法を農村の外にまで広げてスタートした。農・工・商業関係者や公務員、教育者、政治家から芸術家まで心通う人々が手を結び、さまざまな地域おこしを実現。松本から全県、全国に広がり、各地に姉妹風土舎が発足した。
白戸さんは慶応大学卒業後、コンサルタント会社勤務を経て30代半ばで風土舎の"押しかけ舎員"に。自身を「暗い感情の御用聞き」「地域のアクティベーター(活性剤)」と称して人と人をつなげた玉井さんをそばで見続けたという。その後、白戸さんは松本大観光ホスピタリティ学科の教員となり、学んだ姿勢を教育に反映させた。「効率はいいが主体性が育たないトップダウン方式ではなく、一人一人が課題を持ち寄り学習や実践を通じて共有や解決を図る。そうやって自ら考え、自ら動く玉井さんの孫弟子が大勢育った」。
風土舎の再開は創立日の3月3日。白戸さんは再任用で松本大に籍を置きながら、当時と同様さまざまな人が「暗い感情(困り事)」を吐き出す「サロン・ド・グチール」を活動の柱に人や情報のネットワークを築いていく。
「玉井さんが僕の代につないでくれたように、世代を超えて人と人をつなげていきたい。育ててもらった玉井さんと地域への恩返しに」と話している。