連載・特集

2025.2.25 みすず野

 食事の減塩が言われるようになって随分たつ。まずみそ汁の塩分を控えようといわれたように覚えている。それとともに、醤油も塩分の少ない商品が出回るようになった◆こうした食事に慣れると、たまによそで頂くみそ汁が塩辛く感じたり、刺し身の醤油の濃さに驚いたりする。醤油が嫌いだという日本人はあまりいないだろうが、漬物にたっぷりかけるのを見ると一歩引く◆「白米はなにといっしょに食ってもうまい、白米だけでも文句なく食えるが、そこへほんのうっすり醤油のついたもの、これがこの世の最高の味」というのは、昭和天皇の侍従長を務めた随筆家の入江相政(『楽しみは尽きず 入江相政随筆集Ⅲ』朝日新聞社)だ◆醤油を付けたのりをご飯の上にのせ、箸で巻いて口へ。その後、ご飯の上に醤油が少しはけではいたように残る。それを箸でつまんでまた口へ。「炊きたての飯のにおいに、ほのぼのと立ちのぼる醤油の香り、これが醤油の味の最高でなければならない」と。漬物だと白菜を同じようにご飯にのせ、ご飯にかすかに付いた醤油の味を楽しむ。「醤油が典雅に思えるのはこの時」。なるほど、試してみよう。