連載・特集

2025.2.24 みすず野

 今週末はもう3月。ここにきての強い寒波襲来で、ピンとこなかったが、季節は進んでいる。高校の卒業式は、3月に入るとすぐに行われる。大昔のことだから、忘れていることも多いが、卒業証書をもらっても、まだ進路が決まっていなかったことはよく覚えている◆これから1カ月余り、新たな生活が始まるまでの日々はきっと一つ一つのことが深く心に刻まれる。小さな事がいまも鮮明によみがえる。上京する時に乗った列車の座席の位置、部屋を借りて机の上に置いたカレンダーの図柄、街から聞こえた歌。どうでもいいことばかりだけれど◆先日の「月見やぐら」に、高校生の頃、松本で通った喫茶店の思い出が書かれていた。そのいくつかの店が今はなくなってしまったことも。数え切れないほどのあれこれが、次々に浮かび上がるのだろう◆松本パルコが間もなく閉店する。若い人たちに人気があった店だから、同じような思い出を抱える人が大勢いるに違いない。街に建つさまざまな店は、その街の文化の一端を担っている。失うとわかり存在の重さに気づく。寂しいのはもちろんだがその記憶は関わった人の中で生き続ける。