連載・特集

2024.10.29 みすず野

 好きな四字熟語を一つ挙げよといわれると、必ず「一獲千金」と答えてきた。七夕飾りを作っていたころは、短冊に毎年この言葉を書いた。一つの言葉を言い続けると、幸運に恵まれて願いがかなうかもしれないという淡い期待は、ずっと裏切られ続けている◆運の正体はわからないが、運試しはする。神社のおみくじを引いてみる。そんなに古いものではないそうで「十七世紀に元三大師(良源)に起源を求めた百通りの籤が各地の観音霊場におかれたことで流布した」(『見立て日本』松岡正剛著、角川ソフィア文庫)という。五言四句の漢詩で吉凶を示した◆その後、明治維新で神仏分離令が出て、神社は神社なりの工夫をするようになったのが今のおみくじで、引いた後のくじを神木に結ぶようになった。明治39(1906)年に神社の宮司が原型をつくったそうだ◆休日に参拝した神社で、おみくじを引いてみた。「吉」と出た。「次第に栄える運 安心して事に当たってよし」とある。暮らしの中で日頃口にされる運とは、運命というほど大げさなものではない。幸運を期待しつつ、外れてもよしという程度の軽めの運であるようだ。