俳句の世界を味覚で堪能 松本で催し

「現代俳句を舌で味わう」と題したユニークな催しが16日、松本市大手4のゲストハウス東家で開かれた。フランス在住の俳人・小津夜景さんの句集『花と夜盗』を題材に、収録される実験的連作から着想を得た創作料理を味わい、音楽や書からも作品に浸る試みで、県内外の文学愛好家ら15人が参加。五感を研ぎ澄ませ、深遠な短詩の世界を味わった。
同市城東1の書店「books電線の鳥」と、「めしつくるひと」の名で活動する料理人・木内一樹さん=塩尻市=が企画し、昨年夏、冬に続く第3弾として開いた。
題材は『花と夜盗』の連作「水をわたる夜」。漢字3文字の訓読みを俳句にした実験的な連作から3作品を木内さんが料理に表し、作品を伏せて参加者に振る舞った。一通り味わった段階で種明かし。ブロッコリーのペーストと桜エビのおかゆは「英娘鏖 はなさいてみのらぬ/むすめ/みなごろし」の句から着想したとし「花咲いて実らぬといえばブロッコリー。皆殺しから連想した半殺しはおはぎの意味もあるので、おかゆを口の中でつぶして」と話した。
取り上げた句は音楽家・権頭真由さん=松本市=の即興演奏に乗せて、謙慎書道会評議員・上條淳香さん=山形村=がパフォーマンス書道で揮毫。日本語学を専攻する信州大学大学院生・小林智樹さんが漢字を解説した。
句会とは違う鑑賞の場として企画され、味覚や音、漢字の形から参加者が感想を述べ合う場面も。読み解く世界は十人十色で、初回から通う小津ファンの女性(40)=横浜市=は「食と俳句の組み合わせに興味を持った。想像を膨らませる時間が楽しく新鮮」と話していた。