地域の話題

政治や社会を市民と学び100回 信州大学人の会シンポ

100回を振り返り継続を確認した第101回

 信州大学の教員有志が平成27(2015)年に立ち上げ、政治や社会を市民と共に学び合う「平和と憲法をまもる信州大学人の会」のシンポジウムが今春で100回を迎えた。学問の自由と真理の探究を地域に還元し、より良い未来を築く一助に―と毎月第2火曜日夜に開催。歩みを振り返る節目の第101回を11日夜に開き、継続を視野に今後を展望した。

 松本市の信大松本キャンパスを会場に、一昨年からオンライン併用で開く。11日は「大学人の社会的役割とは何か」をテーマに、同会呼び掛け人の成澤孝人・経法学部教授と国立歴史民俗博物館の大串潤児教授が登壇。市民ら約50人が参加した。
 会は平成26年、安倍政権が戦後一貫して維持された憲法解釈の変更を閣議決定し、改憲を経ずに集団的自衛権の行使を容認したことなどを背景に発足。大串教授は「このころから政治家の言葉が空疎に聞こえ、主権者の意思が無視されているという感覚を強くした。われわれの尊厳に関わる問題との意識は初回も今も変わらない」と話した。
 人間の弱さや民主主義の課題、権力の暴走に対し「批判的な討議や営為が本来あるべき。それがこのシンポジウムだ」と成澤教授は述べ、「学問の自由こそ依拠する手段。より良い社会を探る活動を地域社会に還元したい」と話した。
 同会は学部横断的に発足し、大学の枠を超え、時には学生や市民も登壇して憲法や人権、近現代史や国際政治など幅広いテーマで学びを深めてきた。参加する市民ら全ての人を"信州大学人"と呼ぶ。立ち上げから関わる東洋文庫研究員の久保亨・元信大教授は「前身の旧制松高は市民の招致運動でできた。私たちの大学という意識を大事にしてほしいし、そこに応えることも大学の責任」と語った。
 100回記念のポスター展が今月末まで信大付属図書館で開かれている。