連載・特集

2024.6.30 みすず野

 うっとうしい梅雨。せめて屋外の行事がある日は晴れてほしい。昔なら、てるてる坊主の出番だ。天気予報の精度が高まった近年、作ってつるす人、どれほどいるだろう。筆者は子供時分、白い紙を丸めて形を整え、家の軒先につるした◆童謡「てるてる坊主」を作詞した文学作家・浅原六朗の名前を冠した記念館が池田町にある。愛称はてるてる坊主の館。歌詞「あした天気にしておくれ」の部分は故郷・池田町を翌日訪れるのを前に、松本市内で着想したとされる◆六朗は町を父親の事業の失敗で幼少期に離れている。幼心に故郷を後にするのはつらかったようだ。弊紙で掲載している「ミュージアムから」で今冬、同館の高岡妙子館長の記した文が物語る◆同館長は六朗の手紙を紹介。文中に「池田町は小生の小生の生まれた町」とある。実は、原稿を頂戴して校正してもらうとき、気を利かせたつもりで筆者が「小生の」を一つ削った。すると、館長から元に戻すように指示。単純な入力ミスではなく、六朗が文字を重ねた大事な部分だったのだ。文章の「故郷を想う六朗の、大きな声が聞こえてくるようだ」の結びに、膝を打った。