連載・特集

2024.6.2 みすず野

 松本市の国宝松本城天守1階に竹の棒で囲まれた、四角い枠がある。天守の内と外を結ぶ、抜け穴の入り口ではないかと一時、いわれた所だ。松本市教育委員会発行の副読本『わたしたちの松本城』にその場所にちなむ「松本城ぬけ穴伝説」が載る◆副読本によると、竹の棒で囲まれた場所は約2メートル四方で、深さが約1メートルのすっぽりと口を開けたくぼみがある。昭和25(1950)年からの昭和の大修理の時に、抜け穴があるか実際に調査した。結果的にはなかった。「抜け穴」の正体は、天守台の中の支持柱が腐って、跡が穴になっていたのだ◆日本史上の抜け穴伝説と聞くと、天正10(1582)年6月2日に起こった本能寺の変を思い出す人もいるだろう。炎に包まれた織田信長が、抜け穴から逃げ延びたのではないかという説だ。真偽はともかく、歴史のミステリーは心ひかれるものがある◆もうだいぶ前の話だが「国宝松本城を世界遺産に」推進実行委員会が毎年度開いている「国宝松本城七不思議親子探検ツアー」で抜け穴伝説を題材とした問題が出ていた。子供たちが興味津々、くぼみをのぞき込んでいた姿がほほ笑ましかった。