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塩尻出身の出口クリスタ、五輪濃厚 世界柔道で準優勝

 世界柔道選手権大会第2日の20日、アラブ首長国連邦のアブダビで女子57キロ級があり、塩尻市出身でカナダ代表の出口クリスタ=日本生命=が準優勝した。連覇は逃したもののパリ五輪出場を争った同国のジェシカ・クリムカイトを成績で上回り、晴れ舞台への切符獲得をほぼ確実にした。

 2回戦からの登場となった出口は3試合連続の一本勝ちで準決勝に勝ち上がった。迎えたヤマ場では玉置桃(三井住友海上火災保険)と対戦。大外巻き込みで技ありを奪い、優勢勝ちで決勝に駒を進めた。連覇が懸かった一戦は延長戦となるゴールデンスコアの末、指導累積でホ・ミミ(韓国)に反則負けした。
 同階級のパリ五輪代表争いは今大会で一区切りとなる。出口は直近2大会の世界選手権で成績上位となり、世界ランキング首位の維持が確定。ポイントシステムで競ってきた中、今大会の結果でクリムカイトが上回る可能性はなくなった。

 有終こそ飾れなかった。それでも五輪出場を懸けた争いに、好敵手を上回る成績で終止符を打った出口クリスタ。花の都で待つ夢舞台へ、視界が大きく開けたと言っていい。
 選考の最終局面となった今大会。「代表をつかみ取る。(頭の中に)それしかない戦いだった」。幼少期から腕を磨いた長野誠心館道場(塩尻市)の村山洸介館長は、映像を通してそんな感覚を抱いたという。
 順当に迎えた準決勝が正念場となったに違いない。相対したのは3年前の世界選手権の同じ準決勝で苦杯を喫し、有力視された東京五輪を逆転で逃した因縁の相手だった。苦い記憶も薄れていないであろう中、攻めの姿勢で優勢勝ち。「しっかりと勝ち切った。彼女の中で大きかったのでは」。母校の松商学園高校(松本市)柔道部の手塚裕司監督は、画面越しの表情や所作も含めて心中を慮った。
 前回で涙をのんだ失意の底から立ち直り、ここまでの過程でトップに立つ世界ランキングに見合う実力を体現してきた出口。常に隣り合わせの重圧を乗り越えながら五輪切符を巡るレースを駆けた。「強くなったな」。村山館長はしみじみとそうつぶやいた。
 代表争いでカナダ連盟が示す基準は満たした。選ばれたならば、と前置いた上で「彼女には優勝が一番似合う。金メダルを目指してほしい」と期待を膨らませた手塚監督。あとは心静かに吉報が届くことを待つ。