地域の話題

認知症と共に生きよう 松本市が意識醸成に力

多くの高齢者が交流するカフェすいれん。音楽鑑賞や脳トレなども行う

 政府はこのほど、65歳以上の認知症の人が2030年(令和12年)には523万人に達するとの推計を公表した。松本市が令和4年度に行った高齢者等実態調査で、介護・介助が必要になった人に主原因を尋ねたところ、「認知症」と答えた人は18・5%と5・4人に1人の割合に上った。市は今後も患者数が増えると予想し、認知症を特別視しない共生意識の醸成に力を入れる。

 城北地区のボランティア団体が14日、地元の公民館で開いた月1回の集いの場「カフェすいれん」には、高齢者を中心に約50人が集まった。参加者やスタッフの中には物忘れの症状がある人もいるが、特別扱いする雰囲気はない。代表の三村伊津子さん(79)=開智2=は「物忘れのある人でもテーブル拭きや配膳などやれることをしている。自分の役割があるというのは大事なこと」と話す。
 市によると、認知症の市民の数は不明だが、生活習慣の乱れなどで発症は増えているとみられる。偏見をなくす「認知症サポーター養成講座」の受講者は3月末で約2万4700人、認知症の人も参加する集いの場(オレンジカフェ)は市内に約20カ所あり、社会的に関心は高まっている。
 一方で、市の意向調査によると、介護・介助する人が不安に感じることの最多が「認知症対応」で30・9%。本人が発症を認めることに抵抗感を抱いて早期の対応を避ける傾向も少なからずあるという。
 カフェすいれんも7年前の開設当初は認知症への理解不足が見られたが、学習会を重ねるうちに「年を取れば認知症があって当たり前」という意識が根付いたという。三村さんは「時間はかかっても、高齢者が孤立しないように活動を続けたい」と話す。
 市も、当事者や家族らが集うミーティングやチーム活動を応援している。高齢福祉課の勝家知子・福祉担当課長は「認知症はあって当たり前という意識が一般的になるように、当事者の声を伝える取り組みに力を入れたい」と話している。