連載・特集

2024.2.6 みすず野

 未明に目が覚めて、ずいぶん静かだなと思うとき、雪が降っている。雪の降る音などしないのだが人々が寝静まっているときにどこかで起きるかすかな音を、雪が吸い取ってしまっているようだ。そんな時はまとまった量が降る。目覚めぬ朝は、隣家の雪かきの音で飛び起きる◆牧師で随筆家の太田愛人さんは、県内でも暮らした。「毎朝闇の中で目覚めたとき、雪が降っているか否かを、床の中で判断できる聴覚をもつようになると雪国の人の資格が備わるといえる。静寂の中にも雪がつくり出す微妙な音響の相違をとらえる感性が育ってくるのだ」と(『日本の名随筆・雪』作品社)◆慌てて身支度を整え、雪かきに外へ出る。朝が遅いわが家は出遅れて、近所の皆さんがそろそろ終わるころ、ようやく動き出すので、おおむね道路の雪は片付けられている。そのきまりの悪さ◆数年前の元日、大雪で朝から雪かきに追われた。近所のほぼ同年代の男3人で「さあ、ビールがうまいぞ」と笑った。休日はこれができるが、きょうは火曜日。出勤前の一仕事は体力を使う。渋滞覚悟で、早めに家を出なければならない。どうかお気を付けて。