連載・特集

2024,1.4みすず野

 ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ地区攻撃は終わりが見えない。終戦を願うさまざまな行動が、中信地区でも行われている。昨年末に塩尻市で開かれたウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団と、市民公募合唱団との共演は記憶に新しい◆松本市出身の社会学者・大澤真幸さんは新著『私の先生』(青土社)で、紛争解決のために積極的中立という政策を提案する。AとBの間に紛争があるとき、紛争終了まで見ているのが普通の中立。どちらが善悪という判断とは別に、積極的中立は、紛争当事者のどちらも非軍事的に援助する◆それは医師・中村哲さんが、アフガニスタンでやっていたことの一般化だと。医療活動だけでなく、井戸を掘り用水路を造った。「純粋に非軍事的な援助だけで、紛争を緩和したではないか」「今度は私たちの順番である。中村さんからバトンを受けとるとは、積極的中立をこの国の基本方針とすることだと、私は考える」と◆大澤さんが中村さんと会った回数は少ない。1回は雑誌の対談だったが、この対談こそ、大澤さんにとって強い「希望」の源泉だという。この提案をじっくり考えてみたい。